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八点鐘の航海日誌                     

熊本の Bar 八点鐘 (現在は営業しておりません)                                                                          毎日が新しい船出… そんな毎日の「航海」を 書き綴ると致しましょう。

Category :  船長の独り言
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開店間もない時間でした。
一人の青年がドアを開けてくれました。
未だ30前でしょうか?
中々ハンサムな青年です。

「何か、ジンでショートカクテルを作って下さい…」
ジンでショートのカクテルと言えば、ギムレットにマティーニです。
『ギムレットにするか?』
と考えながら一瞬、ハードボイルドの巨匠、レイモンド・チャンドラーの小説 「長いお別れ」 に登場する”探偵フィリップ・マーロウ”のセリフが頭を過ぎりました。

ギムレットとは、ドライジンにコーディアルのライムを1:1でシェークするんですが、ライムの酸味と仄かな苦み、そしてジンのキレと辛み…
あくまでも辛口に男らしさを演出し、飲むシチュエーションにもこだわって自分と向き合う…
そうでなくてはこの酒を飲む資格などありません。
だからマーロウは、乾杯を促す相手に向かって
「ギムレットには早過ぎる…」
ってセリフをうそぶくんです。
ギムレットとはそういう酒なんです…

しかし、青年の落ち着いた雰囲気を見て、
『まぁ~ イイか…』
と、ギムレットを作りました。

「美味しいです…」
言葉のアクセントからして熊本県人とは違うような?
「何処から来たの?」
「東京から引っ越して来ました…」
「転勤?」
「イイエ、お墓を守る為に勤めを辞めて…」
「どういう意味?」
「実は…」
と、彼が始めた話の内容を掻い摘まんでご説明しますと、

彼の父親は熊本出身で東京に家を建ており、80代の祖父母は熊本市内で健在とのことです。
東京の美術館の学芸員だった彼は、あることから熊本城に保管されてる古文書を目にする機会があり、そこに記されていた細川藩士の名字が自分の名字と同じだったことから興味を持って調べると、何と自分のルーツだったんです。
でも、祖父母が亡くなったら墓を守る者も居なくなります。
そこで彼は、見ず知らずの熊本で祖父母を看取り先祖の墓を守ろうと決心し、東京の美術館の学芸員としての職をなげうって熊本に来て2週間が経ったとのことでした。

彼は、ここまで一気に話し、2杯目はマティーニをオーダーするとカクテルグラスを見詰めながら ポツリ と一言、
「でも、寂しい…」
「そうだろうねぇ~ 熊本には友達も居ないだろうし…」
「イエ、友達はじきに出来ると思うんですが彼女のことが…」
「恋人がいたの?」
「エエ、3年付き合ったんですが別れて来ました…」
「どうして? 別れなくても落ち着いたら呼べばイイじゃない?」
「彼女はグラフィック・デザイナーなんですが、漸く陽の目を見るところまで漕ぎ着けて、今からなんです。僕の我儘で彼女のチャンスと才能を潰すことは出来ませんから、『他に好きな人が出来た』 って嘘をついて… でなきゃ彼女は 『ついてく来る』 って言うのが分かってますから… でも彼女の事を考えない日はありません…」
彼にかける言葉が見つからず、
「そう…」
と言うしか有りませんでした。

彼は、
「初めてお会いした方に、こんな話をしちゃってスミマセン… それから幾らですか? 余りお金持って無いから仕事が見つかる迄は辛抱しないと…」
いくら商売だからって、こんな心の綺麗な青年から儲けようなんて思っちゃ~いません!
「金の心配はしなくてイイから酔っ払うまで飲みなさいよ!」
そう言ってジンが好きだと言う彼にビクトリアン・バットを注ぎながら、
「就職はアテがあるの?」
と聞くと、
「やっと月末に面接出来そうです」
「それは良かった。 そうだ! 就職が決まったら飲みにおいでよ。 お祝いしてあげるから!」
「ホントですか?」
「嘘はつかないよ!」
「ヨシ! 彼女の為にも熊本で頑張るぞ!」
それから2~3杯飲ませると、
「熊本に来て、初めての酒だったんですが酔っ払いました! そろそろ帰ります」
そう言うと、
「金は要らない」
と言う私に、無理矢理5,000円札を押し付けて、
「就職が決まったら報告に来ます!」
「あぁ~ 待ってるよ!」

雨があがった昨日、 春一番 みたいな好青年でした!


当店は、お客様お一人お一人のお時間を大切にお過ごし頂く為に、
私の独断と偏見で大人の男と女のお客様限定とさせて頂きます。
25歳未満のお客様と7名様以上の団体様はお断りしています。
(団体様は御予約の場合のみ受け致しております。
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コメント


案外優しいとこあるんだ?
見直しました。 m(__)m
2012/02/24 18:53URL  Ryo #-[ 編集]

泣けました。
ただ、泣けました。
2012/02/24 21:16URL  菫。 #-[ 編集]


良い人は良い人の所へ行く!

マスターの人徳です。

2012/02/25 00:30URL  嘉島の風呂屋 #-[ 編集]


マスターのその優しさ、知った口はきけませんが、それ相応に苦労をされてきたからではないでしょうか。

真の男の優しさは、居心地の良いものです。

少なくとも私はそう思います。

素敵なマスターに乾杯です。
2012/02/25 03:05URL  N下です。 #-[ 編集]


>Ryoさん

やっと解って貰えましたか? (;一_一)
2012/02/25 18:17URL  Ryo #-[ 編集]


流した涙の分だけ、「人は優しくなれる」と言いますが、 菫は優しい人なんですね…
2012/02/25 18:19URL  >菫さん #-[ 編集]


もっと、御夫人に来て頂きたいんですが…
2012/02/25 18:20URL  >嘉島の風呂屋 さん #-[ 編集]


褒め過ぎですよ。褒め過ぎ!
幾ら褒めても、何も出ませんから…
2012/02/25 18:22URL  >N下さん #-[ 編集]


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